売上を増やす前に、手元にお金が残る流れをつくる
注文が増えても、仕入れや広告費の支払いが先なら資金は減ります。商品づくりから入金までを一つの流れとして見て、どこから改善するかを考えます。
実践ノート|第1回/全7回
売上を伸ばしたい。その相談を受けたとき、私が先に確認したいのは「その売上が増えたら、手元のお金も増えるか」です。注文の数だけを増やしても、送料や対応の手間が増え、仕入れ代金の支払いが先に来れば、事業はかえって苦しくなります。
私たち自身も、通販やスポーツEC、商品づくり、専門サービスの運営に取り組んできました。その経験から、商品をつくる、知ってもらう、販売する、届ける、経営するという流れを、別々の仕事として扱わないことが大切だと考えています。
利益が出ることと、お金が回ることを分けて見る
例えば、注文時点で採算が合っていても、仕入れは今月、販売代金の入金は来月ということがあります。利益は売上と費用の関係、資金繰りは実際の入金と支払いの時期。ここを混同すると、売れているのに支払日が怖くなります。この違いは日本政策金融公庫の解説でも整理されています。
まず一件の注文について、商品原価、販売手数料、決済手数料、梱包、送料、直接かかる対応費を並べます。次に、そのお金がいつ出ていき、代金がいつ入るかを書きます。会社全体の損益計算とは別に、注文を増やしたときの負担を見つけるための簡単な地図です。
五つの仕事を、一本の流れにする
商品をつくる:仕入れ・製造にいくら必要で、在庫にどれだけ資金が留まるか。
集客する:誰の困りごとを解く商品か。売れ方を確かめる前に広告費を増やしていないか。
販売する:見積もりや相談から購入までに、担当者の時間と取りこぼしがどれだけあるか。
届ける:梱包・倉庫・配送・返品まで含めて、約束した価値をいくらで届けられるか。
経営する:注文別の採算と、会社全体の固定費・入出金予定をつないで見られるか。
各工程の費用を減らすだけでは不十分です。丁寧な相談で買いやすくなる、正確な在庫情報で取引先の手間も減る、利用支援で継続しやすくなる。そうした価値が、購入やリピートにどう結びつくかまで設計したいのです。
最初に直すのは、いちばん大きく詰まっているところ
問い合わせはあるのに見積もりが追いつかないなら、広告より商談の整理が先かもしれません。注文は入るのに海外送料で採算が崩れるなら、集客より配送条件と価格の確認が先です。在庫が増え続けるなら、仕入れ量と売り方を一緒に考える必要があります。
改善の順番は、目立つ作業や新しいツールから決めるものではありません。「いま何が、お金が戻る流れを止めているか」を起点にします。売上が低い原因が集客とは限らず、利益が低い原因が原価とは限らない。全体を見てから、一か所ずつ手を入れます。
今日できる、直近10件の注文の見直し
直近10件を選び、商品代金と直接かかった費用を同じ表に書く。担当者の対応時間も残す。
仕入れ・配送・広告などの支払予定日と、販売代金の入金予定日を並べる。
「採算が薄い注文」「入金まで長い注文」「対応に時間がかかる注文」を分け、一つだけ改善対象を決める。
10件は傾向をつかむ出発点です。季節性や固定費、返品、税金などを含む全体の資金計画は別途必要ですが、最初から完璧な管理表を目指さなくても、いま止まっている場所は見えてきます。
私がつくりたいのは、機能が多いシステムより、価値を届けながらお金が回る仕組みです。
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気になる課題から読んでも、順に事業の流れをたどっても構いません。実際の経験をもとに、改善の順番を考える7回の実践ノートです。
