メール・FAX・電話の受注で手一杯。仕組みを変えると、新しい取引も受けられる
受注のシステム化は、入力作業を減らすだけではありません。預かり在庫と別注品を整理し、取引先も在庫を確認できるようにした実例から、業務改善の価値を考えます。
実践ノート|第3回/全7回
注文をいただくのはうれしい。でも、メール・FAX・電話の内容を読み取り、在庫を確認し、担当者へ伝えるだけで一日が終わってしまう。人手不足の相談には、注文が足りないのではなく、注文を受ける余力がなくなっているケースがあります。
こうした状態で営業だけを強化すると、現場はさらに忙しくなります。私は、業務を減らすことを守りの改善だけで捉えたくありません。新しい取引を受けられる状態をつくることも、受注システムの大きな役割だと考えています。
実例:受注受付が、新規獲得の壁になっていた
あるお客さまでは、メール・FAX・電話からの受注で業務が逼迫し、新規案件や大規模なクライアントの案件を獲得しにくい状況がありました。扱うのは、預かり在庫と別注品。同じ「注文」でも、必要な確認や管理が異なります。
そこで、預かり在庫と別注品の受注管理をシステム化し、RFIDを活用した在庫管理フローを整えました。預かり在庫の数量をクライアントとリアルタイムで共有できるため、取引先の総務担当者も、その都度問い合わせなくてよくなります。
結果として、自社の処理だけでなく、クライアント側の業務コストも大きく削減できました。運用まで含めて、新規獲得につなげられる仕組みになったことが、この案件の価値です。ここで重要だったのは、画面を増やしたことではなく、取引の両側で繰り返していた確認を減らしたことでした。
先に整理するのは、入力項目より仕事の違い
システム化を考えると、最初に入力フォームをつくりたくなります。ただ、預かり在庫から出す注文と、製作や手配が必要な別注品を同じ手順に押し込むと、結局は電話やメモで補うことになります。画面に入らない例外が、担当者の頭の中へ戻ってしまうのです。
まず「誰から何を受け、何を確認して、誰が次に動くか」を注文の種類ごとに並べます。在庫の数字も、手元にある数量、引き当て済みの数量、追加手配が必要な数量をどう区別するか、業務に合わせて決めます。RFIDも、この運用が決まって初めて生きる手段です。
注文ステータスを、次のアクションにつなげる
「受付済み」「確認中」「手配中」と表示されるだけでは、仕事は進みません。それぞれの状態で、誰が、何日以内を目安に、何をするかを決めます。確認待ちが長く続いたとき、担当者へ知らせるのか、お客さまへ状況を伝えるのか。こうした次の動きまで設計します。
自動化するのは、必要な情報がそろっていて、判断の基準が決まる部分からです。特殊な別注、納期の調整、数量の不一致など、人が確認する仕事は残ります。その仕事を見落とさないように集約することも、良いシステムの役割です。
今日のドリル:忙しい受注を5件だけ追う
最近手間がかかった5件について、受付方法と、完了までに誰へ何回確認したかを書き出す。
注文の種類、現在の状態、次に動く人、目安の日数を一枚の表にする。
「お客さま自身が見られれば減る確認」と「社内で一度共有すれば減る転記」を一つずつ選ぶ。
最初からメールもFAXも廃止する必要はありません。既存の取引に合わせながら、情報が集まる場所と次の行動を整えていく。それだけでも、どこをシステムにつなぐと効くかが具体的になります。
担当者の手間を減らし、取引先も使いやすくする。その両方がそろうと、業務改善は新しい仕事を受ける力になります。
