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コラム2026年10月10日

売れるデザインとは、ニーズを最大化すること

テレビ放送でECサイトがパンクしたとき、一枚の簡素なHTMLページに一時間で150件の注文が届きました。その経験から、ニーズを受け止め、仕入れ・物流・利益までつなぐ「売れるデザイン」を考えます。

売れるデザインとは、ニーズを最大化すること

コラム|EC運営の経験から

「売れるデザイン」と聞くと、写真や色使い、レイアウトを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、見た目も大切です。ただ、私が考えるデザインは、もっと広いものです。

必要としている人に、必要なものを、買いやすく、無理なく届ける。その一連の流れをつくること。

そう考えるようになった原点に、昔のECサイトでの経験があります。

カートが止まったとき、一枚のHTMLで受け止めた

テレビの影響力が、まだ非常に大きかった頃。人気の健康番組で紹介された商品を、たまたま当社のECサイトでも販売していました。

放送後、アクセスと注文が集中し、サイトがパンクしました。

当社がまだクラウドを使っておらず、レンタルサーバーで運用していた時代です。データベースが負荷に耐えられず、商品を買いたい人が来ているのに、カートが使えない状態になってしまいました。

そこで、急いで静的なHTMLページを一枚つくりました。データベースを使わず、商品情報と注文用のメールアドレスだけを掲載する応急措置です。

AIもなく、凝ったデザインを準備する時間もありません。考えていたのは、ただ一つ。「いま、この商品を欲しいと思っている人が、注文できるようにすること」でした。

細かな文言までは覚えていませんが、ページには、おおむね次のような内容を載せました。

テレビ番組で紹介された商品の注文が集中し、現在カートが利用できません。一時的に、メールでのご注文を受け付けています。

商品名、価格、送料表、メールアドレス。そして、注文時に記入していただく名前、お届け先、数量、支払方法。

手作業で受け付けるため、対応に時間がかかる可能性も説明しました。商品手配が整ったら発送前に連絡し、その時点でキャンセルを希望される場合は受け付けることも伝えました。もちろん、店舗情報も掲載しています。

写真は一枚。文字は黒と赤と緑。見た目が整っているとは言い難い、シンプルなページでした。

一時間で150件。買いたい気持ちを止めない

それでも、わずか一時間で、150件の注文メールが届きました。

この経験は、私の「売れるサイト」に対する考え方を大きく変えました。

見た目の完成度や注文の手軽さが十分でなくても、それを上回るほど強いニーズがあれば、人は行動する。必要だったのは、その気持ちを受け止め、注文まで進める入口でした。

ただし、見た目や使いやすさが不要だという話ではありません。あのときは、商品のニーズが非常に強かった。そして、ネットでその商品を買える場所も限られていました。その条件が重なった結果です。

二度目は、仕入れ・物流・価格まで設計した

実は、同じような動きは、一度きりではありませんでした。

二度目は、最初の経験を生かして準備できました。アクセスへの耐性を高め、仕入れを確保し、さらに卸販売の価格も設定しました。

ここでは、販売ページを用意するだけでは足りません。

仕入先がどれだけの商品を供給できるか。どれだけの数量を梱包できるか。注文が増えたとき、どこまで無理なく届けられるか。供給できる在庫とパッキング能力を確認しながら、販売の仕組みを組み立てました。

価格も、末端の販売価格と卸価格を同時に考えています。当社だけでなく、卸先にも十分な利益が残るように設計しました。

結果として、一過性のブームではありましたが、数か月の間に大きな利益を生む仕組みをつくることができました。

キャンセルを受け付けるという条件も、その設計の一部です。

テレビを見て高まった熱は、時間がたてば冷めるかもしれない。その前提で、発送前に意思を確認し、キャンセルできる余地を残しました。商品を届けるまでの時間と、お客さまの気持ちの変化も、取引の流れに含めて考えたのです。

当時は、その商品をネットで販売する事業者が非常に少なく、当社が主要な購入窓口になっていました。限られたネット市場の中で、独占的ともいえる販売の立場を築けたことも、成果につながっています。

ニーズの発信元ではなかった、という学び

一方で、振り返ると悔しさもあります。

そのニーズを生んだ情報の発信元は、当社ではありませんでした。

テレビが生んだ需要を受け止めることはできましたが、自分たちで継続的に需要を生み出すところまではつながらなかった。そのため、長期的なビジネスには育てられませんでした。

私たちが考える、売れるデザイン

この経験には、当社が考えるデザインの原点が詰まっています。

ニーズを見つけ、価値を伝える。注文を受け付ける。商品を確保し、届ける。お客さまが安心できる取引条件を用意し、関わる事業者にも利益が残る価格を決める。

ページの見た目から、仕入れ、物流、利益まで。すべてがつながって、初めて「売れる仕組み」になります。

私にとって、売れるデザインとは、ニーズを捉え、そのニーズを最大限の価値につなげることです。

きれいなページをつくる前に、誰が、何を必要としていて、どこで止まっているのかを見る。そこに手を入れることから、デザインは始まると考えています。


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