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コラム2026年10月12日

安く売るか、高く売るか。「試してみたい価格」と「必要な人が買う価格」

アンケートで答える価格と、必要な人が実際に買う価格。新商品のクラウドファンディングで需要を確かめ、OEM・卸・小売に利益を残しながら海外へ届けるまで、当社の価格設定の経験を綴ります。

安く売るか、高く売るか。「試してみたい価格」と「必要な人が買う価格」

コラム|商品開発の経験から

新商品を発売するとき、価格設定には迷います。

原価はいくらか。競合はいくらで売っているか。販売や広告に、どれくらいの費用がかかるか。

私たちも、自社商品の価格を決める際に大きく悩みました。潜在的なニーズはありそうなのに、それまで市場になかった商品だったからです。

比較できる商品が少なく、そもそもどれだけの人が必要としているのかも分かりません。

今回は、その商品の価格をどう決めたのか。そして、決めた価格が事業に何をもたらしたのかを綴ります。

アンケートの価格には、「試すなら」が隠れていた

開発した商品について、まずターゲットとなる方々にアンケートを行いました。購入してもよいと思う価格には、ある程度共通した回答が集まりました。

しかし、最終的に設定したのは、自社商品でその回答額のおよそ三倍、メーカーとのコラボレーション商品では、およそ五倍の価格帯です。

メーカー品は、関連商品を組み合わせたバンドル商品に限定したOEMでの提供です。自社商品も、セット内容をそろえれば同じ価格になるように設計しています。

この判断に至るまでには、さまざまな葛藤がありました。

便利になる商品ではある。けれど、それまでなくても、なんとかやれていた。どれほど強い需要があるのだろうか。

そこで考え直したのが、本当に必要だと思っている人は、いくらで買ってくださるのかということでした。

アンケートで答えていただいた価格には、実は「試してみるなら、このくらい」という前提が隠れていたのだと思います。

興味を持った人が気軽に試したい価格と、課題を抱えた人が解決のために支払う価格。その違いを、実際の購入で確かめる必要がありました。

クラウドファンディングで、購入という行動を確かめた

製品化には量産が必要で、まとまった初期投資も必要でした。そこで活用したのが、クラウドファンディングです。

当社では、商品をリターンとして提供する形で、量産前から支援を募りました。その際、割引率を変えた早期リターンを複数用意し、価格によって申し込みがどう変わるかも見ていました。

結果として、価格に差をつけても、予約のペースに大きな違いは見られませんでした。

もちろん、この結果だけで、一般販売でも価格の影響が小さいと断定はできません。それでも、私たちにとって大切な手がかりになりました。

少し高くても、必要だと思って申し込んでくださる人がいる。アンケートへの回答から一歩進んだ、購入の意思を確認できたのです。

集まった資金と同じくらい、需要の実績が役に立った

クラウドファンディングでは、資金調達以外にも大きな効果がありました。

すでに申し込みが入っているという実績を、金融機関に示せたことです。

事業計画書に、将来の販売予測だけを書くのではなく、「この条件で、すでに購入を希望している方がいる」と説明できました。

当社の場合、この実績が借入の判断材料となり、金融機関にも早く決断していただくことができました。

量産資金を確保するうえで、集まった金額そのもの以上に、需要を具体的に示せたことが役に立ったと感じています。

価格の中に、商品を広げるための利益を確保する

最終的な販売価格には、有名メーカーとのコラボレーションも見据えていました。

OEMで提供し、卸を経て、小売店がお客さまに届ける。従来の商流の中で販売するには、それぞれに利益が残る価格が必要です。

私たちだけが直接販売して利益を出せればよい、という設計では、販路を広げにくくなります。

また、商品を知っていただくためのプロモーション費用も必要です。借入を返済し、販売を続けるための資金も残さなければなりません。

バンドル化には、組み合わせる商品の利益率を調整し、セット全体として採算を成立させる役割もありました。

価格は、商品そのものの原価に利益を足すだけでは決まりません。誰が販売に関わり、どう知っていただき、どう届け続けるか。その費用まで含めて設計する必要がありました。

「高い」と言われても、必要な人には届いている

現在も、一定の方からは「高い」と言われます。それでも、その商品を必要とし、価値を認めて買ってくださる方がいます。

もしアンケートの回答に合わせて安く販売していたら、どうなっていたでしょうか。

購入数は増えたかもしれません。一方で、宣伝費を確保できず、借入の返済も難しくなっていたかもしれません。メーカーとのコラボレーションも、採算が合わず成立しなかった可能性があります。

また、気軽に試せる価格にしたからといって、商品の用途や価値まで伝わるとは限りません。期待していたことと、商品が解決することがかみ合わなければ、購入後の評価にも影響します。

この点は価格だけで解決できる話ではなく、誰のどんな課題に役立つ商品なのかを、丁寧に伝える必要があります。

利益があるから、世界へ届けられる

現在は、海外展開も進めています。

税や送料が加わるため、お客さまが支払う総額は国内よりも高くなります。それでも、世界各地に買ってくださる方がいます。

海外に届けるには、配送だけでなく、販売の準備や案内、プロモーションにも費用がかかります。

利益があるから、その準備ができる。宣伝もできる。そして、これまで出会えなかったお客さまに届けられる。その循環が生まれつつあります。

価格を高くしたことで、販売数は少なくなっているのかもしれません。ただ、安くすれば、その分だけ購入者が増えるとも限りません。

私たちがいま大切にしているのは、高くても価値を認めてくださる方に、出会い、届ける手段を増やすことです。

必要な人が購入してくださる価格で、販売に関わる人にも利益が残り、その利益を次の販路づくりに使えること。

商品の価格には、そうした事業を続け、広げていくための仕組みも含まれていると考えています。


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